台湾TOUR日記.1 出発前

台湾ライブ2025
2025/03/04火
出発前夜、火曜日の20時はBirushanahの練習日と決まっている。
「おいっす」「お疲れっす!」「おはようっす」
俺がスタジオに入ったのは19時57分。明日は台湾で初ライブ。既に佐野、アオはセッティングを始めている。特に佐野は張り切っているようだ。それもそのはず、対バンには、北欧メロデスの雄『Dark Tranquillity』佐野のフェイバリットバンドだ。夢が叶ったと張り切っていたここ数ヶ月間。俺の脳裏には、佐野の汗だくの顔と、ティシャツの汗臭さが走馬灯のように蘇ってくる。曲作りや今後の展望について、ケンカや言い合いもした。そんな重苦しく厳しい日々の節目が、人生には幾度となくある。今夜もその節目の小さな1つとなろう壁、俺達は幾度これを迎え、そして越えて来たろう。今夜はBirushanahの集大成が試される覚悟の確認リハーサルだ。
「じゃ行きますよ!ワンツースリーウホー!…」

予定していた演奏セットリストを一周を終え、今更
「なんか上半身と下半身がリズム狂ってるやん!ズレズレやん」
「ツーバス練習し過ぎで足疲れてて動きません…。」「だからコツコツ毎日少しずつ練習やでってゆうたのに!いっぺんにやるから!もー!」
「いや、毎日比較的ほぼ練習してたんすよ!?」
「絶対毎日!?」
「いやだいたいほぼ毎日やってました」
「それやったら毎日ちゃうやん!俺なんか尺八の基礎練、ロー、レー、ハー、イー、各11分ロングトーン七年くらい絶対欠かした事ないで!毎日!アルムの森で車ぶっ壊れた時だって」
「はぅ、酒っすわ、酒が悪いんですわ!」
台湾ライブ前、不安と空回りのキャッチボールする俺と佐野の会話を遮るように、1人黙々とベースを確認しながら弾く新メンバーのアオ。この男、若いがなかなかに出来た奴で、あーだこーだグダグダ言い合う、俺と佐野のような馬鹿さアホさが一切無い。とにかく無口で問題解決へ向けひたすらに邁進していくような、AIのような男。もちろんその事は演奏にもよく現れていて、特に今のBirushanahのあのポンコツでデタラメとも言える佐野のドラムセットに見事に絡み、また
「うむ、ここの何Hzが云々…ミュートが云々、マイクのgateが云々…」
と言ったような科学的根拠に基づき、音響的理論の元に佐野のポンコツ器材をまるでMRIするかのように分析し、善玉菌を引き出すようなベースを弾いてくれる。そんな頼もしい存在なのである。
ようやく最後のリハーサルを終えて、そのまま佐野は、明日飛行機内へ持ち込む機材を梱包し始める。
「うわ、はみ出してまう!切らなあかんやん!重量超過料金なんぼやろうか…ペダルどうしょうかな…ヤバいな」
明日、台湾へは佐野は一人別働で行くのだけれど、大丈夫だろうか。この日、受け入れ難い不安を増幅させる最後のリハーサルになった事は言うまでも無い。

…続く

Text by Iso

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