2025/03/05水
夕方17時30分空港へ到着。予定より30分も早く着いた。どうやらアオはまだ来ていない。搭乗ゲートを確認しながら、独特の匂い。香水と珈琲、異国の匂いを感じている。来日アーティストの送り迎え等で来ていた昨今。やはり関空はワクワクさせてくれる場所だ。コロナ禍で狂ってしまったかつての計画も今は昔、改めて自分は旅人であるべきだという事を知らしめてくれる。そんな世界への玄関口で、心に新たな目標を刻んだ。
「そろそろ時間やけど、アオまだかな」
俺はスマホのSNSを開く。するとアオからメッセージが届いているではないか。まさかトラブルかと恐る恐る見てみると、(早く着いたんで先に搭乗手続き済ませて中入ってます。)
…い、いつのまに…?置いてけぼりだ。待ってたのに。全く冷静沈着メガネキャラにも程がある。
そんな流れで無事搭乗手続きを済ませてアオと合流し、いざ台北へ。わずか3時間程度のフライトだ。あっという間だ。でも飛行機の中は暇なので、予め映画とかをスマホにダウンロード済み。準備万端と思われたその時、Bluetoothヘッドホンを家に忘れて来た事に気がつく。よくやる失敗だ。以前はヘッドホン頭にしたままスマホを忘れた事だってある。後者で無いのがまだ救いだが、ワイヤレス化してからというもの、イヤホンとスマホのセパレート感が増し、このような事例が頻発している。改めて有線イヤホンの利便性を感じたのだった。
あっという間に台湾へ上陸。予想通り厳しい入国審査だと感じた。アメリカ大統領が変わった影響もあるのだろう。世界のあらゆる蛇口が閉められつつある。かつて世界をこんなに穴だらけにしておいて何を今更。と考えたりする。が時代の移り変わり、流れ、それに対応する事は、人間として至極当然の事だと思うので、寧ろそれを楽しみつつ、俺は受け入れます。まして、ずっと何も起こらないという事はありえないし、もしそう感じているのてあればそれは、ただ立ち止まったまま、じっとしているに過ぎないのであるから。
空港に着いたのが夜10時半、この時初めて電車バスの終電時間を調べていない事を知る。
「しまった…間に合うか?」
長引いた入国審査で空港出口を出た頃には周辺施設の照明が落ちており、辺りに閉館、終電という不穏な空気が漂い始める。
「ISOさん、あっち電車乗り口じゃ無いですかね?」「よし走ろう!…」
「この自動改札分かりにくいな、なんぼやねん、台北なんとか駅までなんぼか分からん!」
そんなやりとりをしていると、案内窓口からおばさんが、
『あんたら次終電やで?乗るんやろ?こっちへきぃ』
「…アオどう思う?信用出来るか?」
「最終まで残り2分少々、ここはおばさんに賭けてみるしか無さそうですね」
『あんたらもう分かったから!はよこっちでやったるから!はよしーや!』
と、おそらくそう言っているのであろう。激しく手招きする彼女に全権を委ねると、瞬く間に精算が済み、お釣りとプラスティック製のコインのようなものが手渡される。人生ゲームの小銭のおもちゃのようなやつだ。
「何これ!?」
「うーむ。この時点で予想されるのは、おそらくICOCAの様なICカードのコイン版ってところでしょうか」
『あんたらもうええから早よ行かな知らんで!』
「…はう、ありがとう!」
と伝え急いで階段を駆け降り、今まさに到着した最終列車に滑り込みで乗る事ができた。
先行している佐野へ連絡をとり、行き違いなどありつつもなんとか宿泊施設へ到着。
「ふう、着いたお疲れ!この部屋俺ら三人部屋?」
「いや他にも沢山おるっす。カプセルホテルっぽいやつです」
「え…、これじゃ明日朝尺八ルーティン出来へんやん…どうしよう」
…続く
Text by Iso