台湾TOUR日記.3 台北ライブ編

2025/03/6木
もうずっと前の話、ヨーロッパツアー中に、スイスのアルムの山中上り坂で、ツアーバンのエンジンが壊れてしまい、その処理の為におよそ一週間近く山小屋での滞在を余儀なくされた事がある。勿論その間のツアー日程は大幅に削減され、我々の収入源とモチベーションは大きく下がってしまったのだった。とは言え、尺八のルーティンを中止する訳にもいかず。
「🎵ローー…ロー…ローーー」
「うるさ…、朝ごはん食べてお腹いっぱいなったから少し横になりたいんすけど。」
「は?音楽のツアーで来てるんやから寝てるとか?あかんやろ?音楽しにヨーロッパまで来てるんやで?という事は…部屋の使用権は尺八を練習する者にある!さー全員出てって!!外で遊んできー!」
「えー!!?そんな無茶苦茶なぁー!!」
朝6時半に目覚めた俺は、台北のホテルでそんなヨーロッパツアーでの出来事を思い出す。今思うと無茶苦茶な言い分だ。ともあれ、このシェアハウス風バックパッカー対応型安ホテルで、尺八ルーティンなどしようものなら追い出されるのは俺だ。しぶしぶ尺八を手に外へ。小雨の降る中近くの公園でルーティンをこなす。現地の人々に変な目で見られても、犬に吠えられても動じない。思えば自分も成長したものだ。不動心をもって都会の喧騒と小鳥の囀りと協奏し、己のチューニングをする。
昼頃になって、食事をしながらメンバーで今夜の打ち合わせ。屋台の店で3人牛肉系の炒め物を食べた。ルーローハンを頼んだアオは
「これが一番安心安定の食い物っす。八角があんまり好きちゃうんで。全部の食い物に八角の味するの疲れてきます」
「八角って何やろ。八角親方やったら分かるけど」
そんな事を話しながらオーガナイザーから、リハーサルが予定時刻より早まるという旨を聞く。共演者の「Ethereal Sin」が入国に手間取ってしまった事が理由らしい。ライブ当日の入国はさすがにリスクが多いだろう。後に聞きたのだが、彼らは今アジアツアー中らしく、前日はカンボジアでの公演だったという。彼らは同じ日本のバンドなのだが、その存在を知ったのは今回の企画だった。まだまだ知らないバンドが多くいる。特に世界で活躍する日本のバンドは誇らしく思う。何故知らないのであるか。それは外へ出ているから。答えは単純なのである。
リハーサルを終え、夕方になってオープン。
Dark Tranquillityの物販はすでにsold out。
会場の『Jack studio』の入り口は長蛇の列だ。およそ時間通りに公演がスタートする。
一番手地元のバンド 『Eüreka』デス声の大男と、ソプラノ風高音声の女性のツインボーカル。合奏美しく、静寂と躍動を重厚でヘビーなリフで蹂躙するようなダークで、かつポップな要素も孕んだメタル。シンセサイザーの女性の音響も前衛的で、そこに惹かれる。地元でも人気がありそうだった。
二番手『Ethereal Sin』from東京、白塗りコープスペイントのブラックメタル。美しいメロディラインや疾走感も屈強なリフも、世界を股にかける歴戦の本格派スピードメタルバンドである事が容易に伝わってくる。今夜がツアーファイナルらしく、その達成感と意気込みをひしひしと感じた。
三番手『Birushanah』台北の満員の客はとても暖かく迎えてくれ、あっという間の30分間の演奏だった。しかし俺たちの爆発力を伝えるには充分だった。
トリ『Dark Tranquillity』言わずもがな、キャリア、音、容姿もスーパースター。背後のプロジェクターに投影された退廃的で混沌とした映像が、彼らの甘いルックスに相反する逆転の発想で、尚ダークでヘビーに感じさせる魔力を帯びた禍々しい偶像を生み出す。約1時間半くらいの演奏。音響に関しては、超満席故に低音が消え、如何とも計り難かったが、客席横の空いているスペースで体感すると、とてもバランスが良い音だと感じた。当人達も楽しんでいて、目一杯演奏を歌を味わうようだった。ドラムセットに、ケルティックな彫刻が施されていた事に気付けたのは共演者の特権。
終始大盛況だった今夜のイベント。現地の暖かいお客さん、オーガナイザー、スタッフ共演者達と交流しながらあっという間に終演、そして夜は更けていく。片付けを始める俺、物販がほぼ完売だった事に気がつく。もっと在庫持ってきたら良かったかな…。本当にありがとう。

…続く

Text by Iso

 

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